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バックオフィスの問題点

バックオフィスの問題点

バックオフィスの問題点

企業が抱えるバックオフィスの課題

企業の経済活動に直接関りがあるのは、営業、マーケティング、開発、製造などのフロントオフィス業務ですが、それを後方支援のかたちで支えるバックオフィス業務の円滑な業務遂行や効率化、コスト削減などが企業運営の鍵を握る時代になってきています。

そもそも、企業内の業務は大きく分けてフロントオフィスとバックオフィスに分けられ、フロントオフィスが、企業の最前線で直接お客様と関り、提案や販売を行ったり、フィードバックを受け取り改善につなげるなどの業務に携わることは容易に想像できます。企業活動には、「生産」「販売」「事務・会計」という3つの機能があり、直接売り上げに関わる「生産」や「販売」の機能がフロントオフィスです。マーケティングは、後方支援の形で売上を支える性質上、バックオフィスにカテゴライズされるのではないかと思われがちですが、新規顧客の開拓や顧客満足度を上げるためにある業種なので、営業と同じフロントオフィスに分類されます。

実際には、企業によっては、法務やリスクマネジメント、IT情報などを担うミドルオフィスを分けて考える企業もありますが、ここでは、バックオフィスにまとめて分類しています。では、バックオフィスにはどのような業種があるでしょうか。

経理給与計算、経費精算、売上管理、税金の計算、決算書作成など
財務資金調達、投資、資産運用、貸借対照表や損益計算書の作成など
法務訴訟・クレーム対応、取引先との契約関連業務、社内コンプライアンス研修など
人事・労務人材の採用 教育や研修、部署移動や配置、勤怠管理、就業規則の作成、福利厚生の管理
総務機器や備品などの発注やメンテナンス、稟議書や契約書、会議用の資料など重要書類の作成・管理
一般事務、庶務庶務・電話応対、来客対応、データ入力、ファイリング、営業補佐、伝票処理、簡単な清掃
情報システムPC設定、ネットワーク・サーバー管理、セキュリティ対策、社内システムの開発・運用管理

さまざまな企業において、現在バックオフィスが抱える課題が浮き彫りになっていて、それらを解消するための取り組みが進められています。実際、バックオフィスが抱えていて、解消しなければいけない問題点にはどのようなものがあるでしょうか。業種や業態、企業の規模によっても多少の違いはありますが、おしなべると、以下のような点が挙げられます。

バックオフィスが抱える課題
  1. 1. 属人化がもたらすリスク
  2. 2. 変化に対する対応力の低さ
  3. 3. モチベーションの低下
  4. 4. ガバナンス、内部統制の不備
  5. 5. コストリダクションの難しさ
  6. 6. バックオフィスのDX
  7. 7. 人材不足
1. 属人化がもたらすリスク
業務の属人化とは特定の従業員以外業務の進め方や進捗状況がわからない状態を言い、担当者がいなければ、誰もその業務に手がつけられない状況のことです。担当者であれば、慣れた業務をスムーズに進行させることができますが、組織の業務フローに組み込まれていたり、売上比率が高い業務が属人化しているとしたら、企業にとっては、大変なリスクやデメリットがあります。この状態は、組織としての管理が行き届かず、うまく進行している場合は良いのですが、万が一その「ブラックボックス」化した状態で密かにトラブルやクレームが発生していても、担当者しか知らなければ、他の社員はトラブル・クレーム対応にあたることができません。その特定の業務のノウハウやナレッジが社内に蓄積されておらず、担当者以外その業務を遂行することができなければ、急に大きな仕事が入り多忙になっても、担当者だけに大きな負担がかかり、心身の健康を害するリスクさえあります。特に昨今の人材の流動化が加速している状況下においては、属人化している業務の担当者が病気や怪我で仕事ができなくなったり、急に離職してしまった場合は、組織運営に大きなダメージを及ぼしかねません。業務の属人化のリスクやデメリットには以下のようなものがあります。
1. 担当者の長期休業や退職などで業務が滞るか品質が低下する
ノウハウや経験を持つ担当者が急な病気や怪我で入院したり、何かの事情で退職してしまうなどで業務にあたれなくなると、代わりにその業務に入った社員が全体の業務を把握することができないため、品質が著しく低下したり、作業効率が悪くなる可能性があります。
2. 業務自体が「ブラックボックス」化する
「ブラックボックス」化した業務フローを放置することは、不正の温床にもなり、効率の悪い方法で業務を進めていても、改善の機会がありません。ミスやトラブルがあり、隠蔽が行われていても誰も気がつかないでいるという状況が発生するおそれがあります。
3.イノベーションが阻害される
業務の属人化が長期間続くと、ノウハウや知識を特定の社員のみが持ち続けることとなり、非効率なプロセスで業務が遂行されていても、気が付かれることがないまま長期間続いてしまい、変化や刷新を嫌う土壌においては、改善提案が出にくいばかりでなく、効率化の提案も受け入れない傾向にあります。属人化が続いている業務においては、担当者の判断に基づいて業務が遂行されるため、新しいアイディアや情報が業務に反映されにくく、イノベーションの機会が阻害されます。
4.業務フローでボトルネックが生じる
組織の運営のフローの中に属人化している業務がある場合、その担当者がなんらかの理由で不在になってしまうと、その業務が滞りボトルネックとなり、生産性の低下や納期の遅延など業務の停滞を招いてしまうリスクがあります。ひいては、顧客満足度が低下し、信用度なども下がります。
5.ノウハウやナレッジが蓄積されない
そもそも、ナレッジ共有の文化がない企業も存在しますが、ある一定の業務の属人化によってノウハウやナレッジが組織に残らない、蓄積されず、業務にあたる担当者がいないと何もできない事態を招いてしまうことになります。マニュアル化されておらず、担当者のみの「暗黙知」に頼ってしまうと、いざ他の社員が業務にあたる場合、業務内容を理解できないという事態に陥ります。
2. 変化に対する対応力の低さ
企業規模や業種によっても違いますが、顧客のニーズが変化していること、ビジネスを取り巻く環境やグローバル競争においての様々な変化に迅速に対応することが難しく、長年続けてきた方法を変えられないパターンが多いようです。機会損失や効率の面で相対的な遅れをとってしまっていることに気がつけないことは事業自体が淘汰されるリスクにもつながりかねません。
3. モチベーションの低下
やればやっただけ売上や数字に反映されるフロントオフィス業務と比較すると、繰り返し作業が多く、創造性や専門性が活かせる業務が少ないため、バックオフィス業務に携わる社員のモチベーションを高く維持させるには、ある程度の工夫が要ります。バックオフィス業務を行う社員のモチベーションが下がると、生産性が落ちる、ミスやクレームが増え、顧客満足度が下がるなど企業においてあまり良いことはありません。近年働き方が多様化し、従来の「終身雇用制度」という考え方は次第に薄まってきていて、人材の流動性が高まっています。バックオフィス業務を担う優秀な人材が流出してしまうことで、組織全体の生産性低下や売上低迷につながり、組織の信用性が低下する可能性があります。優秀な人材の流出は、同時にノウハウの流出でもあり、これが他社に渡ってしまうと、自社の競争力が下がります。また、優秀な人員が離職してしまうことで、チーム全体の士気やパフォーマンスが低下します。バックオフィス業務におけるモチベーション低下の原因は主に以下のようなものが考えられます。
1. 地味で単調な仕事内容
データ入力や書類作成など単調で反復的な作業が多いバックオフィスの作業においては、モチベーションを高く維持するのは、難しいかもしれません。営業や販売、マーケティングなど成果が表れやすく達成感を感じやすいフロントオフィス業務と比べると、縁の下の力持ち的な仕事が多いためです。ただ、企業全体を支える大事な業務でもあり、日々の業務の中でもスキルや知識を積み重ね、個人の価値を高めることは可能です。
2. 不明瞭な評価制度
バックオフィス業務の性質上、個人の成果を明確に数値化することは困難です。評価基準も上長の主観の割合が多いため、不平等だと感じる人が多かったり、どんなに頑張っても自分の貢献が評価に反映されないと感じたら、「頑張っても意味がない。」とモチベーションを高く維持することを諦めてしまいます。このような状態が組織内で常態化すると離職率も高まり、組織に対するエンゲージメントの向上は望めません。
3裁量権や責任がない
裁量権、責任を社員に預けず、管理者サイドで全ての業務の骨子の指示出しをしていると、社員は、自主的に動くことをしなくなり、与えられた業務だけを行っていればよいと考えるようになります。狭い範囲からのみ発出されたアイディアには限界があり、グローバル競争はおろか企業間競争にも置き去りにされてしまうことは否めません。バックエンド業務を担う社員がモチベーションを取り戻すためには、エンパワーメントの必要性があります。裁量権や責任を与えられることで、「信用されている、頼られている」と感じるようになり、モチベーション、エンゲージメントが向上するようになります。
4.コミュ二ケーション不足
コミュ二ケーションは、組織全体の活性化において大変重要です。日々の業務内容の進捗状況を共有する機会がないと自分の仕事がどのように評価されているのか、組織やチームの目標達成に貢献できているのかがわからず、達成感や充実感を得られません。また、風通しが悪く、先輩や上司に対して意見やアイディアを出しにくい雰囲気があると、社員のモチベーションが低下することに加え、組織のイノベーションも阻害されます。また、業務上で何か不明な事やトラブルがあっても、気軽に聞くことや相談することができないと、間違ったまま業務を進めてしまったり、滞ったまま放置されてしまう可能性もあるため、日頃から社内でのコミュニケーションが円滑になるよう心がけ、信頼感のある環境を維持することこそが組織全体の生産性アップにつながります。
4. ガバナンス、内部統制の不備
バックオフィス業務におけるガバナンス体制や内部統制の不備があると、組織にとって深刻な影響があります。
ガバナンス体制や内部統制の不備
企業とステークホルダーの信頼関係を維持するためにもガバナンス体制や内部統制の強化は必要です。バックオフィスのガバナンス体制に不備があると、企業にとって以下のような影響があります。
1. 経営リスク増加
ガバナンス体制の不備があると、不正行為や不正会計を抑止することが難しくなります。また、問題が発生したとき、責任逃れやたらい回しが発生し、責任の所在が曖昧になります。結果的にトラブル対応が遅れたり、隠蔽が発生するなどして顧客や投資家からの信頼が失われます。
2. 業務効率低下
ガバナンス体制の不備があると、非効率な業務フローが放置され、社員のモチベーションが低下する場合があります。社員のモチベーション低下は業務効率が低下し、コスト増加につながります。
3. 情報漏洩のリスク
ガバナンス体制の不備により、顧客情報や社員情報、企業秘密の漏洩が起こりやすくなります。漏洩が発覚したときも迅速な対応ができず、問題が大きくなり、顧客からの信頼が失われます。
ガバナンス体制が整っていないと、必要な意思決定が遅れたり、非効率な作業が延々と続けられたり、リスクを抱えたまま誰もそこに手当てしないといった状況が放置される傾向があります。ボトムアップされたアイディアや効率化の提案を吸い上げて経営戦略に役立てたり、緊急時の様々なリスクを想定し、それぞれのシチュエーションで誰がどのように行動するかなどをマニュアル化する必要があります。ガバナンス体制や内部統制に不備が生じると、経営側と現場の乖離が生じ、社員のモチベーションが下がるなどして、非効率な方法での業務が続けられたり、抑止力の低下により、横領などにつながる場合もあります。
5. コストリダクションの難しさ
バックオフィス業務は、経理、総務、人事、法務、情報システム、庶務など幅広い職種にまたがり、企業の規模や業種によっても違うため、人件費や事務用消耗品費などの見えるコスト以外のコストが大きく、コスト削減に関して一律に考えることはできません。見えないコストを削減することにこそ中・長期的なコスト削減に関する課題解決の糸口があります。アナログ率が高い業務プロセスを当然のように続けていることこそ、見えないコストそのものです。書類やタイムカード、給与明細等を紙ベースで管理したり、手続きに押印が必須だったりしている企業はいまだに多いのではないでしょうか。現在、多くの企業が脱アナログに舵をきっているのは、コストリダクションの鍵がそこにあるからなのではないでしょうか。バックオフィス業務は範囲が広く業務量が多いため、業務効率化の施策を検討する時間がとれないことが多いようです。中・長期的なコスト削減のためにワークフローの棚卸しを行い業務プロセスを細かく可視化し、思い切った効率化を図ることが大切です。具体的な効率化・コスト削減のための施策にはどのようなものがあるでしょうか。現時点では、以下のようなものが考えられます。
1. アウトソーシング活用
専門性が高い業務で、自社の人材に教育や研修を行っている時間やコストを準備できない場合、外部に業務を委託することで不必要なコストを抑えることができます。また、外部に委託可能な簡単なデータ入力の作業が大量にある場合もアウトソーシングを活用することでコスト削減できる可能性があります。但し、バックオフィス業務をアウトソーシングに頼る場合は、サポート体制を万全にし、機密情報の管理やセキュリティ対策に十分に配慮する必要があります。
2. RPA (ロボティック・プロセス・オートメーション)活用
業界を問わずさまざまな企業で導入されている業務自動化ツールはバックオフィスの定型業務を自動化し、人間が行うとかなり時間がかかる膨大な量の作業を短時間で処理してくれます。人間が大量の単純作業を行う場合、ストレスも加わりミスも発生します。その点、業務自動化ツールを使えばヒューマンエラーが減り、作業効率が上がり、ミスを訂正する時間やコストの損失を防ぐことができます。また、人間と違って、疲れて作業効率が落ちることがなく、スピーディーに業務を遂行することが可能になるので、RPAツールでできることは、ツールにまかせてしまい、コア業務に集中できるため、より高度なパフォーマンスが可能になります。
3. ERP (統合基幹業務システム)導入
基幹システムや業務アプリケーションは、企業が主要業務を行うのに必要なシステムです。銀行の場合は会計勘定を行うシステムで、製造業の場合、生産管理システムや販売管理システムを基幹システムとして使用します。ERP(Enterprise Resources Planning)は、複数の基幹システムや情報系システムを統合し、データベースで一元管理するシステムのことです。ERPは技術的にハードルが高く、以前は大企業でないと導入が難しいものでした。現在では、インターネット上で使用できるものが増え、中小企業でも導入しやすくなっています。業務システム導入により、紙媒体でのデータ管理が不必要となるため、管理にかかるコストも抑えられます。
4. ペーパーレス化
紙ベースで保管されていた社内のデータをデジタルで保管すると、物理的なファイルの保管スペースの必要がなくなります。紙の印刷、郵送などの手間を考えるとデジタルで保管、編集しメールで送るほうが切手や封筒もいらずコスト面でのメリットは少なくありません。ドキュメントが不要になった場合のシュレッダーにかける手間やゴミがでないことなど、ペーパーレス化を推し進めない理由はありません。
5. マニュアル策定
業務の目的や業務フロー、注意点などの情報を業務マニュアルとしてまとめておくと、例えば担当者が急に辞職や転職でいなくなってもきちんとしたマニュアルがあれば、業務が停滞するリスクを免れることができます。業務が属人化していてマニュアルも存在しないと、作業の品質が低下するばかりでなく、顧客からの信頼が失われることも想定できますが、業務自体が長期間ストップしてしまう重大なリスクもあります。これは、コスト以前の問題であり、ノウハウの共有や業務の標準化は企業にとって必須の最低条件であると考えられます。
6. クラウドサービスの利用
クラウドサービスを活用することは、オンラインストレージの利用にしてもオンラインの各種サービス・アプリケーションを使用するにしても、外出先や自宅、取引先などどこからでもアクセスが可能で、交通費など移動のためのコストや時間が不要になり、場所や時間に縛られないで働くことができます。Web会議システムや電子帳簿システム、営業支援ツールなどの「ワ―クフローシステム」は、稟議書や各種申請書の申請→承認→決済等の一連のフローをブラウザ上で完結できます。また、オンラインストレージ活用はペーパーレス化にもつながり、見えないコストを大幅に削減することができます。
6. バックオフィスのDX
現在凄まじい勢いで企業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)が進んでいます。これまではDXといえば、フロント業務向けというイメージでしたが、テレワークや在宅勤務が増えたことも手伝って、現在ではこぞってバックオフィスのDXが進められています。ビジネス環境の激しい変化に対応するために組織の風土、企業文化を変革し競争の波を泳がなければならないためです。法務のDXで格上企業との契約が叶った、経理のDXでコストの削減が叶ったなど成功事例も増えています。ただ、経理や法務のDXについては、オンラインで資料のやり取りをするのが難しい場合が多く、押印が必要であったり、機密情報の漏洩が心配だったりすることで、サーバー管理の技術者を新たに雇用したり、システムを構築する費用がかかったり、DXによるメリットを持続可能なものにするために一時的に莫大な費用がかかります。費用だけでなくかなりの時間やリソースも必要になるため、バックオフィスのDXは簡単ではありません。しかしながら、ビジネスが加速するために必要な改革は後回しにせず、着実に進めることをお勧めします。
7. 人材不足
小・中規模の企業や、創業初期の企業においては直接ビジネスを前に進めるためのリソースに力を入れる傾向があり、限られた人数でバックオフィス業務を行っていく必要があります。業務量は多いのに、直接利益を生み出すフロントオフィス業務に比べると、あまり人件費に経費をかけられないという点や、繁忙期と閑散期の業務量が違う点などで、バックオフィスが人材不足に陥っている企業は少なくありません。バックオフィスの業務はおしなべて地味な仕事が多く、優秀な人材は、クリエイティブな業務やキャリアアップが望める職種に流れてしまいがちです。また、近年は、趣味やライフワークを重視する働き方をチョイスする働き方が増えていて、バックオフィス業務のような、長時間の労働を避ける人も増えています。では、バックオフィスの人材不足を解消し、業務を滞りなく進行させるには、どのような方法があるでしょうか。
働き方改革
テレワークやフレックスタイム制を導入し、育児やライフワーク・趣味などとのバランスをとりながら柔軟な働き方ができるように環境を整えることで、人材の定着率が高まり、離職が少なくなります。
人材育成
個々の特性やニーズに合わせた人材育成を行うことによって、社員のモチベーションが上がり、個々のスキルが上がるにつれ作業効率が上がります。研修にeラーニングなどを活用すれば場所の制約なしに研修を受けられます。また、先輩や上司によるメンタリングを活用することで人材育成は効果的に進めることができ、成長度合いの確認も行えます。
採用の強化
職種や業務内容を見直すことも大切です。従来の事務処理業務に加えて、データ分析や簡単な企画業務など専門性が高い業務も加えることで、優秀な人材の採用も見込めます。また、採用条件の見直しも採用の強化につながります。年齢制限を見直したり、副業やフリーランス人材の受け入れ、学歴や年齢の制限を緩やかにすることも効果的です。また、給与や福利厚生を充実させることで求人者の目に留まる可能性も上がります。求人内容を見直すだけでなく、常用している求人媒体に加え、転職フェアや説明会に参加したり、HPをリニューアルする、SNSで発信するなど、企業名を知ってもらうことや企業のブランディング強化も効果があります。ただ、せっかく求人効果がアップしても、採用担当者の「見定める力」や「企業をアピールし、求人者を引き付けるスキル」が欠如していたら、せっかくの人材候補が他社に流れてしまいます。企業が必要とする人材を見極め確実に採用できるよう、採用担当者に対する研修や教育も考える必要があります。また、せっかく採用が決まっても、採用した人材が企業に定着できなければ、採用を拡充した意味がありません。オンボーディングプログラムの策定、メンター制度の導入、定期的な面談、日報や週報への上司の返信など、人材育成のしくみも拡充しなければ、採用を強化する意味がなくなってしまいます。
業務効率化
限られたリソースでバックオフィス業務を滞りなく進行させるには、まず業務全体の棚卸しを行い、業務フローの「見える化」を図る必要があります。非効率に続けられている業務があれば、リストアップします。属人化している業務は直ちに標準化できるよう、その業務もリスト化します。業務フローの分解を行ったら、クラウドサービスやツールなどによって自動化できる業務はないか、アウトソーシングを依頼できる業務はないかなどの洗い出しを行います。クラウドサービスの利用により、業務が効率化するだけでなく、ペーパーレス化により、郵送費などのコストが削減できるようになります。アウトソーシングの活用は、専門性の高い業務の質を高めたり、コールセンター業務の外注でコアの人材が社内の重要な業務に集中できるなどのメリットがあります。業務の質や効率を高める意味では、副業人材、フレックス制度、成果主義など柔軟に働きやすい環境を整え、優秀な人材を確保し定着させることも重要です。
 

アウトソーシングの活用について

近年業務効率化やコスト削減を目的に、バックオフィスのアウトソーシングが注目されています。コロナ禍に業績が落ち込んだ会社は特に業績を取り戻す必要があり、利益拡大のために営業やマーケティング等のフロント業務に資金やリソースを集中させる傾向にあります。その皺寄せによりバックオフィス全体の人手不足が懸念されており、現在働いている社員の過労やモチベーションの低下、業務がまわらないことで離職者が増えるなど、バックオフィスのリソース不足が企業のビジネス継続にもたらす影響は少なくありません。コロナ禍で低調だった業績が上がり始めると、それに伴いバックオフィスの業務プロセスにおいて業務量が増えてもそれを処理する人員が足りていないというジレンマに陥っている企業が多いようです。企業のDX化の必要性が叫ばれている一因はそのあたりにあります。

また、働き方改革により時間外労働の制限があるため、一人当たりの業務量は限られてしまうというコンプライアンスに配慮する必要性、社員の増員により生じるコストなどを考慮した上で、バックオフィスの業務プロセスを外注化するという判断に辿り着く企業が多いのではないでしょうか。

アウトソーシング活用のメリットとデメリット

アウトソーシングの活用のメリット
求人にかけるコストが省ける
バックオフィスのアウトソーシングを利用するのであれば、求人広告費や採用にかけるコストを省くことができます。会社説明会の会場費やそのための資料作りにかかるコストなど求人から採用にかかる見えないコストは意外と大きく、人的リソースもとられがちです。その手間やコストが省けるのは大きなメリットです。
コア業務に社内のリソースを割り当てられる
バックオフィス業務を外注化することで社員の業務負担が減り、社内のリソースをより重要な業務に割り当てることができます。
状況に応じた人員の増減が容易にできる。
繁忙期と閑散期が生じてしまう業務であっても、状況に応じた人員の増減が容易にできることもバックオフィス業務を外注化するメリットです。
業務の質改善
専門性が高い業務を外注化すると、業務効率や業務の質が高くなる傾向があります。多くの場合、アウトソーシング業者は、最新の技術で、高い知識とスキルを駆使して効率的に業務を進めることが可能で、以前から社内で非効率なやり方で進められ続けてきた業務の改善点に気づかされることも多いようです。
アウトソーシングの活用のデメリット
情報漏洩のリスク
2023年に改正された個人情報保護法第25条では、「個人情報取り扱い事業者は、個人データの取り扱いの全部か一部を委託する場合は、委託先に対して必要かつ適切な監督を行わなければならない」とあります。委託先のミス(もしくは故意)で情報漏洩があった場合、委託した企業が責任を問われることは明白です。委託先のセキュリティ体制がどのようなものかの確認が必要ですが、万が一情報漏洩が起こった際にはお互いどのような対応を行うかも事前に契約内容に盛り込むことでリスクヘッジにつながります。
ノウハウが自社に蓄積されない
アウトソーシングを活用してバックオフィス業務を行った場合、委託先業者に100%依存してしまうと、委託先を変えたり、自社で同じ業務を行うようになったときに、業務マニュアルがなくどのようなプロセスで行えばよいかわからないという事態になるリスクがあります。業務のブラックボックス化を防ぎ、委託先とのコミュニケーションによってアップデートされた業務効率化の方法なども業務マニュアルに追加し、定期的に見直すようにしたいものです。また、アウトソーシングする業務に関する知識を持つ社内担当者を育成し、ノウハウを社内で確実に引き継いでいくことも、マニュアル保存と共に大切です。
柔軟な対応が難しい
バックオフィス業務を外注化した場合、急な変更があった場合、委託先によっては、契約上、柔軟な変更が難しい場合があります。社内で処理している業務であれば柔軟に変更やストップができることも、外注化しているとそれができない場合があります。急な変更が起こりにくいプロセスに限定して依頼する必要があります。
アウトソーシングの活用の注意点

バックオフィス業務を外注化するということは、大変機密性が高い情報を外部者が取り扱うということになります。企業の情報漏洩は、以前にも増してインシデント発生時の罰則が厳格化しています。委託の際は、口頭でのやりとりやメールのやりとりで安心することなく、契約書を作成し、万が一トラブルが発生した際はお互いにどのように対応するかなども記載しておくことです。また、委託業者との円滑な関係性を築き、コミュニケーションを図ることも大切です。誤解や認識のずれで意図しないミスが生じたり、納期の遅れや品質の低下を防ぐためです。また、社内で担当者を決めておかないと、責任の所在が曖昧になります。双方の担当者を一元化し、窓口を明確にしましょう。また、便利だからとアウトソーシングばかりに頼ってしまうと、コスト削減を目的に利用したはずなのに、費用対効果のバランスが崩れてしまう場合もあるので、注意が必要です。

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